真澄探当證8 近江の国の商人が市辺押磐皇子主従を助ける
この時、大泊瀬幼武尊(雄略天皇)主従は、予定通り市辺押磐皇子主従を惨殺して、
目的を達したといえども、今だに市辺押磐皇子と侍従長の佐伯部売輪(さえきべのうるわ)らが生死不明のため、
ここかしこと捜査中に、ついに主従が深手の傷を負い、そのまま倒れているのを発見して、大いに喜び、主従の首を刎ねて持参するより、そのまま体ごと拉致しようと、包囲したところに、
逃げた市辺押磐皇子の乗馬が駆け戻って、包囲していた敵兵めがけて蹴り飛ばす勢いで、実に優れた勇将も及ばぬ唯一無二の働きをして、これに困った大泊瀬幼武尊の臣下群臣兵卒は、市辺押磐皇子主従を捨ててそのまま退散した。
この時、ご乗馬は主をもう奪い去ろうとする時に、猛烈に敵兵を追いちらし、続いて主従の傍らにぐるっと周りを囲んで守護することは、以前のごとくで、四方を眺めて守護に余念がなかった。
この有様を見ていて、馬のあとをつけてきた近江商人らは非常に感心して、
獣といえども主に尽くす忠孝は普通の人が及ぶところにあらず。
ならばこの乗馬の主人は、この負傷者であろうと話しつつ、しかし旅の商人は皇子であるのを知らず、ただ種々の装飾品が見事であるので、相当に名のある武将であろうと想像して、
もしや我らがこの土地を遁れて、自分達の本国で介抱して養生させれば、蘇生して回復し、再度また戦えるようにもなろうと、二人は共に皇子たちを助けようと決心した。
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